この夏、大好きな作品がまた一つ増えました。
それがこちら
『サバカンSABAKAN』
です。
7月に引っ越してから、
なにかとバタバタしており、
映画からも遠ざかっていたので
事前情報はゼロ。
サバカンってなに?あの、さばの缶詰の映画?
って、思いながらも、面白そうなので行ってみることに。
そうしたら、
めちゃめちゃおいしかったです。
おいしすぎたので、
おかわりしてしまいました。
つかみでつかまりました
映画はこんなシーンから始まります。
急な坂道を
自転車を押して上っていく二人の少年
一人は前でハンドルを握り
もう一人は後の荷台を押す
一歩一歩前へ踏みこむ足に、
自分の全体重をかけて
よいっしょ
よいっしょ…
少年たちが二人がかりで押しても
自転車はゆっくりとしか進まない
それほど坂道の傾斜はきつくて
どこまでも続いている
よいっしょ
よいっしょ
こちらも思わず力が入ります。
それを見ながら
思い出しました
その少年の靴
青地に白いラインの入った紐靴です。
あ、あの靴は!
それは自分が子どもの頃
はじめて買ってもらった紐靴でした。
明るい青、スカイブルー地に白いラインの入った紐靴。
サイドの白いラインの下には、獲物を追って疾走するヒョウのマーク、そして”panther”の英文字。
パンサー。
青いパンサーを買ってもらったのは
確か小学校4年生の時。
軽くて何もはいていないみたいにぴったり。
白い紐をキュッと結ぶと
駆け出したくてウズウズする「走りたい」スイッチが入りました。
運動会はもちろんパンサーで。
決して足が速かったわけでもなく、
走るのが得意でも
好きだったわけでもないのに
靴のマーク、
このヒョウが私に1位を取らせてくれる、と勝負に勝つ気満々になっていました。
目の前のスクリーンに映る
私のお気に入りだった青いパンサー
はじまりのシーンから
これは、もう、やられたな、
と思いました。
パンサーに、
この少年たちに、
心を射抜かれてしまいました。
https://www.secaicho-union.jp/
Panther(パンサー)
1964年に登場した国産スポーツスニーカー。ジャガー・クーガー・オニツカタイガーなど同様に国産のスニーカーとして大変人気があった。柏原芳恵がCMを担当。一時販売終了していたが2016年に復活。(Wikipedia 世界長ユニオンより抜粋)
映画・サバカンSABAKAN レビューなど
(画像はhttps://sabakan-movie.com/#より)
内容紹介
1986年の夏のこと。
主人公・久田くん(通称ヒサちゃん)は、喧嘩は日常茶飯事、けれど愛情たっぷりな両親、生意気な口を利く弟の4人家族で暮らいしています。
算数も社会も理科も苦手だけど、国語が得意な彼。
ヒサちゃんの書く作文は、担任の先生を感動の涙でぐちょぐちょにするほどの大傑作です。
同じクラスの竹本くん(通称タケちゃん)は、ちょっと変わった男の子。
家が貧しく、4人の妹がいて、いつも同じシャツ。
教室では、黙々と自分の机に魚の絵を描いている彼(しかもすごくうまい!)。
クラスメイトにからかわれても、まったく気にせず、堂々としている竹本くんを、ヒサちゃんは内心かっこいいと思っていました。
そんなある日、ヒサちゃんとタケちゃんは二人きりで冒険に出かけることになります。
険しい山を越えて(これが冒頭の自転車を押すシーン、)海を泳いで渡った先にあるブーメラン島へイルカを見るために。
(画像はhttps://sabakan-movie.com/より)
最初はぎこちなく始まる二人をみていると
もどかしくなります。
友だちになり始めた頃って、こんな感じだったな。
まだ友情というほど完成されたものではなく、
相手の気持ちを少しずつ確かめながら、言葉かわす
そのうち、だんだん距離が縮まるのがわかって
うれしくてたまらない
みたいな。
子どもたちの周りには「いろんな形」の優しさで彼らを見守る大人たちがいます。
怒鳴られても、
しばかれても、
あとから胸に”じんわり”としみてきます。
夏休み終わり、二人の関係に少しずつ変化が生まれてきます。
そして、
思ってっもみなかった事件が起こってしまうのです。
見どころ
『サバカン』は、大人になった僕が、少年時代を回想し、あの頃の僕を語る物語。
大人になった僕を演じるのは草彅剛。
改めてこの映画で彼の声の魅力を感じました。
とても自然で、
耳に心地よい
低く優しく響く声
乾いた砂に水がしみこむように
胸の奥まで
じわじわとしみました
ある年の夏の日、小学生の僕はクラスの男の子と二人きりで、ある目的を果たす旅に出かけることになります。
ほかの友達はもちろん、親や兄弟にも絶対ナイショ、秘密の冒険です。
そのあたり、リバー・フェニックスの代表作、『スタンド・バイ・ミー(Stand by Me)』にちょっと似ています。
ただ、彼らの目的は、『スタンド・バイ・ミー(Stand by Me)』の少年たちのような
怖いもの(死体)を見つける
ことではありません。
彼らの目的は、
イルカ!
イルカを見に行くこと、なのです。
舞台になっているのは、長崎県の長与町で、時は1986年の夏。
調べてみたら、『スタンド・バイ・ミー(Stand by Me)』ができたのと同じ年でした。
監督はドラマ「半沢直樹」など主にテレビ・舞台の脚本・演出を手掛けてきた金沢知樹氏、脚本は金沢氏と萩森淳氏との共同による完全オリジナル作品です。
長与町は金沢監督の出身で、物語は創作でありながら自身の体験が基になっていて、登場人物には、ほぼモデルがいることも明かされています。
空の青さ
海の青さ
山の濃い緑、
緑に映える蜜柑のだいだい色、
夕焼けの赤、
何気ない風景なのに、
ジーンときました。
そこへは行ったことがないけれど、
その景色はなつかしく思えます。
そこで暮らす人々は、温かく心が豊かで、やさしさにあふれています。
すべてがあったくて、
じわじわとしみてきて、
涙があふれて止まらなくなりました。
1998年生まれの娘は当時を知らない世代ですが、私より大きな音を立てて鼻をすすっていました(笑)
冒険には危険がつきものです。
壁のようにそそり立つ坂道を越えなければならなかったり
唯一の移動手段で、頼みの綱の自転車が壊れたり
バリバリの不良に喧嘩を吹っかけられたり
海を泳ぎながら足がつって溺れそうになったり
と、まあいろんなことが起こります。
神様は乗り越えられない試練を与えない
を体を張って見せてくれる少年たち。
彼らの演技はとても自然で、引き込まれました。
その年の夏が終わり、事態は予期せぬ方向へと流れていきます。
そして、大人になった彼らにとって、いいこともそうでないことも丸ごと全部が「人生で忘れられない宝物」となるのです。
めったに思い出すことのなかった子どもの頃の自分を久しぶりに振り返り、
彼らとおんなじだったな、
笑ってしまいました。
1980年代が散りばめられていて目が離せない
物語の舞台となっている1980年代の風景に感動しました。
青いパンサー、
キン消し(キン肉マン消しゴム)のガチャポン、
教室の赤茶けた木の机、
平たくて丸い水筒、
斉藤由貴のカレンダー、
小学生に容赦ないヤンキー、
神社の境内の裏に無造作に捨てられたエロ本、
JPSのロゴがついた黒いキャップ、
誰もいない駅の改札口、
自転車の荷台にタオルを縛り付けて二人乗り、
小銭をもってスーパーにおつかい、
自転車で子どもの二人乗りは禁止で大人と子どもはOK、
道端で拾った100円をちゃっかりくすねたら刑務所いき、
イルカに乗った少年、
酒と泪と男と女を口ずさむ父ちゃんの背中、
父ちゃんの自転車に二人乗りで帰る夕焼けの空、
そうそう、
これこれ、
あ、これ知ってる!
おお、これも知ってる!
全部知ってるぞ!
うれしくてスクリーンに向かって声を上げたくなりました。
1980年代が散りばめられた風景は、
なつかしすぎて涙が出ました。
あたたかい涙を流したいときは『サバカン』をお召し上がりください。
キャスト・スタッフ
番家一路(ヒサちゃん)
原田琥之佑(タケちゃん)
尾野真千子(ヒサちゃんの母)
竹原ピストル(ヒサちゃんの父)
福地桃子(ヒサちゃんの父ちゃんの妹)
ゴリけん(タケちゃんのおじさん)
八村倫太郎(JPSのロゴがついた黒いキャップの兄貴)
茅島みずき(ヒサちゃんのマドンナ)
篠原篤(国語の先生)
貫地谷しほり(タケちゃんの母)
草なぎ剛(大人になったヒサちゃん)
岩松了(タケちゃんのライバル)
監督 金沢知樹
脚本 金沢知樹 萩森淳
音楽 大島ミチル
主題歌 りりあ。
映画のタイトルになっている「さばの缶詰め」は、ヒサちゃんの思い出を語るうえで欠かせないアイテムです。
自分にとって、あの夏、あの日を思い出すアイテムって何だろう?
あなたにとっての「サバカン」は何ですか?
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