はじめに
この絵本を読むと、子どもの頃、小学校時代の自分を思い出します。
主人公のカエルくんと幼い自分が重なって苦笑いしてしまいます。
今となっては懐かしい思い出ですが、でもまだ心の片隅にはのどに引っかかった魚の骨が取れてない感じが残っています。
まだひっかかってるってことね
でも、そんな私の思い出話はあとにして、まずはこの絵本の紹介から。
【絵本】マルマくんかえるになるってどんな本?
マルマくんかえるになる
文 片山令子
銅版画 広瀬ひかり
ブロンズ新社
あらすじ
マルマくんは「はす池」にすんでいるかえるの子どもです。
かえるの子どもだったらおたまじゃくしじゃないの?
と思われるかもしれませんね。
マルマくんはもうおたまじゃくしではありません。
かえるになったばかりなので、こどものかえるなんです。
ただ、ほかの子どもたちとは少し違ったところがあります。
それは、しっぽがついていること。
マルマくんは大きなしっぽがついているので、ほかの子どもたちのようにスイスイ泳ぐことができません。
そんなマルマくんを、はす池の子どもたちがからかいます。
でも、マルマくんには同じようにまだしっぽがあるキーヨくんとルビーちゃんという友だちやガマ先生という強い味方がいるんです。
友だちや先生といっしょに過ごすのは、マルマくんにはとても楽しい時間でした。
そんなある日、浮き輪をつけて泳ぎの練習をしていたマルマくんとキーヨくん、ルビーちゃんは、はす池から流されて川に出てしまいます。
大変です、川には滝もあるんです。
まだちゃんと泳げない3人にピンチが迫っています。
はたして3人はピンチを乗り越えることができるのでしょうか!?
感想
とっても優しいお話です。
タイトルにもあるとおり、マルマくんは最後にはかえるになります。
ただ、そこにたどり着くまでの行程がほかの子よりも長かったことから、物語にあるようないろんなエピソードが生まれていきます。
まだうまく泳げないマルマくんにとって、かえるの学校のガマ先生は、とても心強い味方。
「普通の授業が終わったら、君たち(泳げない子たち)だけの先生になるよ」
と特別授業をしてくれるのです。
泳げない子たちも泳げるようにと、浮き輪や水中眼鏡を用意したり。
どうすればわかりやすく教えられるかと、泳ぎの指導方法を学び直したり。
マルマくんたちと同じように、ガマ先生もがんばってくれる様子には、やさしさがあふれています。
ガマ先生が部屋の窓から夜空の流れ星を見ながら、しみじみとつぶやく場面があります
こんなふしぎなときがあるのはかえるだけなんだ、
ゆっくりだっていいんだよ
と。
心に染みるワンシーンです。
まわりの子どもたちの少しあとから歩いているマルマくんを温かい目で見守るガマ先生に、改めて教えられることがいろいろとありました。
広瀬ひかりさんの銅版画で描かれた絵がとてもかわいくて素敵です。
マルマくんのいるはす池の風景が生き生きと描かれています。
池のそばの白つめ草やレンゲソウ、あざやかなピンク色をしたはすの花、丸かったり細長かったりそれぞれ葉の形も背丈も違う水草。
見上げると真っ青な空に浮かぶ白い雲は、高く細く伸びていたり、モクモクと湧き上がる入道雲だったり。
夜空に輝く星のまたたきも、まるでそこにあるような感じ。
とてもユニークな乗り物も出てきます。
ガマ先生が運転するはすのバス。
大きな丸いはすの葉に、きのこのいすとハンドルがついていて、きのこの傘の上に腰かけたガマ先生はハンドルを握って、うまく泳げない子どもたちの救済に向かうのです。
とても乗り心地がよさそうでしたよ。
泳ぎの練習につかれてハスの葉でお昼寝する3人のそばで、テントウムシも白いおなかを空に向けてお昼寝していたり、お昼寝している子どもたちのうえを、ひらひらとモンシロチョウがとんでいたり。
見ているだけでのどかなゆったりした気持ちになります。
そうそう、三人の浮き輪もそれぞれデザインが違っていて、女の子のルビーちゃんのご愛用はお花散りばめられた浮き輪です。
緻密な線と豊かな色で描きこまれたすばらしい作品を見ているようで、銅版画ってこんなに美しいんだなぁ、と感動しました。
マルマくんと私
ここからは私の思い出話です。
(スルーしてもらって結構です)
私はもうすぐ4月になる、という少し手前の3月下旬に生まれました。
生まれた時から小さくて、小学校の4学年くらいまではずっと背の順番でいちばん前。
前へならえ!のとき、手は腰でした。
足も遅かったし、いつもみんなの後を追いかけている子でした。
先生から
HANAさんは何をするにも、取り掛かるのが遅い。
絵を描くときも、ほかの子が絵具でぬり始めた時、ようやっと絵の具のふたをあけてパレットに出し始めてます。
もうちょっと早くできるようになるといいんですけどねえ
といわれたらしいです。
とにかく人より何倍も時間がかかる、おっとりでゆっくりでのんびりな子だったんです。
そして、いちばん辛かったのは給食の時間。
食べるのも遅かったんです。
1年生の頃はなかなか食べ終わらなくて、掃除の時間、机を後ろに下げられた中で、一人でポツンと給食を食べる子。
給食の時間は苦痛でした。
特に嫌いなものが出た日は最悪。
それでも残してはいけないというルールがあって、泣き泣き口にいれて流し込んでました。
そんなある日、参観に来ていた母が見かねて担任の先生に、
もう勘弁してやってくれ、
と言ったそうです。
そしたら先生が
彼女はいま、がんばっているんです、もう少し見守ってください!!
とおっしゃったとか。
そこで母も
「ぐっ」
とこらえて、我が子の成長を見守ることにしたのだそうです。
だいぶたってからその話を聞いて
見守ってくれんでももええわ~!!
叫んだわ。
ほかの子が外で遊んでいるのに、
自分はなんでこんなとこでいつまでも食べなあかんのや!
と思いながら食べてましたから、給食は大キライでした。
わが家の子どもたちは給食が大好き
今の給食は日替わりランチみたいで羨ましすぎる
おかわりじゃんじゃんしてる、っていうんですけど、私は未だに「給食=掃除の時間に食べてた屈辱」がよみがえります
ゆっくり食べていいんだよ、
ぜんぶたべられなくてもいいんだよ、
そんな優しさがほしかったわ~
編集後記
というわけで、『マルマくんかえるになる』はみんなのようにできなくても、その時にできることを楽しめばいいんだなぁ、というメッセージが込められた本。
あのときの自分に読み聞かせてあげたい一冊です。