久しぶりに浮世絵を見てきました。
場所は太田記念美術館、浮世絵専門の美術館です。
原宿駅から5分ほど歩いたところにあるこぢんまりとした建物には、およそ14,000点の浮世絵が収められています。
その中から毎回ユニークなテーマに沿って厳選されたさまざまな浮世絵が展示されています。
たとえば、「かわいい浮世絵、おかしな浮世絵」「花魁ファッション」「異世界への誘いー妖怪・霊界・異国」など。
浮世絵にはあまり縁のなかった私ですが、この美術館と出会って、浮世絵に対するイメージが大きく変わりました。
さて、今回のテーマは「江戸の土木」。
絵のモチーフは、埋め立てや架橋、寺院の建設といった土木工事の作業風景や完成した建築物、埋め立てて再開発された街などが中心です。
作者は葛飾北斎、歌川広重など。
200年ほど前の江戸は、東洋のベネチアとたとえられるほど川や水路がたくさん流れていたのですが、これだけたくさんの浮世絵に川や水、橋が使われているのを見て、《水の都・江戸》を実感しました。
そして、その川や水路は後に埋め立られて、新しい街が作られます。
日比谷や渋谷など大規模な再開発で街が新しく変わりましたが、こうした街の再開発、実は浮世絵にも描かれるんです。
それほど江戸時代にもたびたび行われていたんですね。
歴史の流れを感じました。
橋を架けるために木を削り、石を積み、工事現場で働く人、水路や橋を使って物資を運ぶ人、出来上がった橋の上を行き交う旅人や町人たち。
みな生き生きと描かれていました。彼らの表情や姿を見ていると、活気に満ちた街だったことがよくわかります。
200年近く前の土木工事による建造物やインフラを描いた浮世絵は、当時の人々の生活を知る貴重な記録でもあります。
先ほど紹介した本展のチラシ、いま風にいうとフライヤーに描かれているのは上部に「富嶽三十六景 深川万年橋下」の一部、中央から下は「富嶽三十六景 遠江山中」でどちらも葛飾北斎の作です。
中央の太い角材と格闘する人物が気になります。
今から200年も前の土木工事ですから、ほとんどの作業が人力です。
こんな太い材木を切るのは大変だったんだろうなぁ。
太い角材を切るために、上からと下からの二手に分かれてのこぎりを動かしているんです。
こんなふうにして人力で切っていたんですね。
便利な生活に慣れてしまった自分から見ればと、
当時は大変な思いをしていたんだなぁ
と思ってしまいますが、作業をする男たちの表情を見ると、意外とのどかな雰囲気が漂っていて、拍子抜けしました。でも、考えてみれば当時はそれが当たり前、大変だ~と騒ぐほどのことでもないのかも。
もう一つ気になるのは、彼らのそばで別の作業をしている男。
赤ん坊を背負った女の人に声をかけられいます。
もしや、奥さん?
彼女の声は聞こえているのに、知らん顔をしているような男のとぼけた表情がリアルです。
今もこういう人っているようなぁ、
200年前の人に親近感がわいてきます。
ほかにも、芝居小屋や茶屋が並ぶ猿若町、遊廓が並ぶ吉原や深川木場の雪景色、日本橋や御茶ノ水、日比谷など、聞き覚えはあるけれど今とはまたく違う景色をたくさん見ることができました。
今回の展示でいちばん印象に残っているのは葛飾北斎の「富嶽三十六景 東都浅草本願寺」という作品。
(写真はAmazonからお借りしました。クリックするとAmazonにとびます)
浅草寺の屋根越しに富士山、風を受けて空に舞い上がっている凧、下界の街並みが見えます。屋根の細かい描写と美しい青に魅せられました。
浮世絵には、町人や子ども、午、猫、犬 と言った動物などとても身近に感じられる絵もたくさんあり、当時の庶民の生活を身近に感じることができます。
浮世絵が、当時の街を知る歴史の記録として重要な役割を担っていることに気づかされた興味深い展示でした。
江戸の土木展は11月8日(日)までです。
東京都渋谷区神宮前1-10-10
JR山手線原宿駅より徒歩5分
東京メトロ千代田線・副都心線 明治神宮駅前より徒歩3分
開館時間 10:30~17:30
休館日 月曜日
入場料 一般 800円 大高生 600円 中学生以下無料
問い合わせ 050-5541-8600(ハローダイヤル)
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