(3/8追記しました)
毎年センター試験の時期になると雪が降るのが不思議です。
雪=寒い=暗い、そんなイメージを持つようになったのはいつから?
子どもの頃は雪が降ると大喜びで外で遊んでいたのにね。
絵本を読んで雪の日の楽しい気分をもう一度!そんな絵本を紹介します。
『ゆき』
ユリ・シュルヴイッツ 作
さくま ゆみこ 訳
あすなろ書房
《ストーリー》
どんよりとした灰色の空の下、ある町に雪がほんのひとひら、まいおりてきました。
せいたかのっぽのとんがり屋根の店、四角い形のアパート、大きさも形もばらばらな建物が、通りに並んでいます。
灰色の空と同じで建物はすべて灰色、道路も灰色。
そんな灰色の町の通りを何人もの人が歩いています。
大きなラジオをショルダーバッグのように肩からかけた男、
ひょろ長い帽子をかぶり地面に届きそうな長いコートを着たおじさん、
おしゃれな傘をさして、黒いコートを着て真っ赤なバッグをさげ、真っ赤なハイヒールをはき、つん、とすまして歩くおばさん、
向かいあって帽子をひょいと上に持ち上げてあいさつをかわす二人の男たち、
鼻の下に長い八文字ひげを蓄えたおじさんたちは話し込んでいる様子。
よく見ると、ある建物の2階の窓から、外を見ている男の子がひとり。
小さな雪のカケラがふってくるのを見つけた彼は言います。
ゆきがふってるよと
長い黒ひげのおじいさんは
これっぽっちじゃ ふってるとはいえんなと言いました。
男の子は外に出て犬といっしょに通りを歩きます。
ゆきがもうひとひらまいおりてきました。
男の子が楽しそうに駆け出すと、犬も後ろを走ります。
もうひとひら、またひとひら
雪はひらひらと舞い降りては地面にとけていく。
大人たちは
たいしたことないな
といい、
ラジオもテレビも
ゆきはふらないでしょう
と。
けれど、ゆきは次から次へとどんどんふってきます。
男の子は両手をあげて
ばんざーい
と大喜び。
おとなたちのぼうしに、かさに、頭に、背中に、靴の上に、どんどん雪が降り、彼らは背中を丸めて下を向いて寒そうに急ぎ足で歩きます。
そして建物の上や道路には白い雪がとけることなくつもっていきます。
男の子はそんな雪の上を楽しそうに歩いて行きます。
すると男の子が通り過ぎた後から不思議なことが起こり始めて!!
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この先はぜひ手に取って、ページをめくって、男の子のワクワクをいっしょに味わってください。
そして、とても素敵なエンディング。
雪が降った次の朝の明るい光に照らされて輝く世界!
そして魔法がかかったような不思議で楽しい雪の世界!
私はラストのここが見たくて、また最初から読み返してしまいます。
ユリ・シュルヴィッツについて
ユリ・シュルヴィッツは1935年ポーランドのワルシャワ生まれ。4歳で第二次世界大戦の空襲に焼け出され、旧ソ連のトルキスタン(現在のカザフスタン)へ移りました。
ユリ・シュルヴィッツの一家は、その後も各地を転々とします。12歳でパリに、そして14歳でイスラエルに、1959年にはアメリカに渡ります。ニューヨークの出版社で児童書にイラストを描きはじめ、1963年『ぼくのへやの月』を出版。同年『空飛ぶ船と世界一のばか』でコールデコット賞金賞を受賞。
『ゆき』は同賞オナー賞のほか、ゴールデンカイト賞、日本絵本賞翻訳絵本賞などの賞を受賞しています。
現在はニューヨーク在住です。
ユリ・シュルヴィッツの絵本はこちらで紹介されています。
一部ですが中の絵も見ることができます。
ユリ・シュルヴィッツが自分の幼いころを描いた『おとうさんのちず』
彼の幼いころの生活は、『おとうさんのちず』から知ることができます。
戦争のために、その日の食べ物も手に入れることが難しく、住むところも他人との共同生活を強いられるような貧しい暮らし。しかし、そんな生活の中でも、彼は絵を描くことで自分の想像を膨らませ、楽しい世界を生み出していきます。
なぜ、彼は絵を描き続けることができたのか?
それは、一時の空腹をしのぐためのパンを買うかわりに、一枚の世界地図を手に入れたお父さんの存在がありました。彼のお父さんの「心を豊かにする」という選択があったからです。
今、私たちがこんなに楽しい絵本を目にすることができるのは、彼のお父さんのおかげだと思いました。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
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