(1月21日に追加・修正しました)
一人暮らしを始めるとき、気にかかることの一つは「自炊」ができるかどうか、ということではありませんか?
自分でメニューを決めて、材料を買い、料理するだけのことですが、自炊を始めたばかりの人、あるいは、料理はやったことがない人にとっては、慣れるまではこれがなかなか大変です。
「自炊」するなら、安くて良質の食材を選びたいし、栄養バランスに偏りがないようにメニューも工夫したい。味もおいしく作りたい。
ところが、いざ始めるとなると、
仕事(学校)が忙しくて買い物が面倒、料理を一人で作ったことがないからできそうにない、自分で作ってもおいしくない、料理する時間もない、そもそも料理なんて興味ない
など、いろんな理由で、自炊から遠ざかってしまうことも少なくないのではないでしょうか。
でも、食材を選んで、調理して、おいしく食べられることは、毎日を元気に生きる、がんばる力につながります。そして、大きな満足感や達成感も得られます。
自炊力 料理以前の食生活改善スキル
自炊力 料理以前の食生活改善スキル (光文社新書)
白央篤司 著
超初心者の目線で自炊を気楽に考えて、できることから始めようという視点で書かれたのが『自炊力 料理以前の食生活改善スキル』です。
郷土の食、栄養、暮らしと食をテーマに執筆活動されている著者、フードライターの白央篤司氏は
「料理ができないならできないなりに、自炊の方法はある、
コンビニパスタと冷凍野菜でも立派な自炊になる
お惣菜を買ってきてもいい。でも、せっかくだったら栄養のバランスを考えて野菜(カット野菜や冷凍野菜、フルーツ)なんかを添えてみては?」
と、超初心者でもできる自炊の始め方を提案し、料理ができないと躊躇していた人に、始めるきっかけを与えてくれています。
そして、
バランスを考えた食材の選びかた(買い方)
食材の扱い方(例えば食材は洗ったら水を切るなど)
パッケージの注意書きの読み方
といった身につけるべき基本。
さらに、
健康に食べるために意識してほしいこと
として栄養面についても触れられていて、食への理解が深まります。
また、レシピ本やレシピサイトを見るとき、その書き方が初心者でも理解できるか(あいまいな表現がないか)を見極めることが大事、というのは、料理に慣れたものが初心者に勧めるときに見落としがちな点だと思いました。
そのほか、「自炊日記」では実際に特売と余り物を利用した著者の自炊生活が、写真入りで紹介されていて、実際にお手本にできる点も多々ありそうです。
この本を読むと、「食」への意識をスイッチオン!から始めて、少しずつ覚えてけばいい、と気楽に思えるようになります。
チューブ生姜適量ではなくて1㎝がいい人の理系の料理
チューブ生姜適量ではなくて1cmがいい人の理系の料理(秀和システム)
五藤隆介 著
料理が日常生活の一部になってしまうと、適当、という量があいまいだということすら忘れてしまっています。
この本は、そんなあいまいで、不鮮明なレシピにメスを入れ、料理初心者だからこその視点から料理を分析・解説した本です。
料理初心者で、理系の著者(podcasut「ごりゅごcast」は平日毎日更新中)のレシピには「1/2本」、「少々」、「適宜」という分量はありません。すべて150ℊとか3ℊなど明確な数字で示されていて、それはチューブ生姜や薄切り肉にも及んでいます。チューブ生姜を1㎝絞り出し、肉を5㎝(一口大)に切りそろえるために定規まで用意するのは行き過ぎの感もありますが、すべての分量を明確にし、すべての作業になぜそうするのか?という疑問を掲げ、それに対する答えをみつけて解説されています。誰が読んでもわかる料理の解説書といったところでしょうか。
感覚的になんとなく、で料理をこなしてきた私には「ここまで事細かに検証するとは、すごいな」と感心する点が多くありました。
料理初心者が疑問に思うことへの答えを教えてくれる本であり、また、料理経験者が、初心者に教えるときに見落としがちなポイントを気づかせてくれます。
新・ベターホームのお料理一年生(ワイド版)
新・ベターホームのお料理一年生<ワイド版>
ベターホーム協会 編集・発行
先に紹介した『自炊力 料理以前の食生活改善スキル』のなかに、初心者に合ったレシピ本を使うべきだということが書かれていますが、まさに、この本はそうした初心者目線に立って作られています。
レシピ本ではなく、料理の教科書、と言えるでしょう。
『お料理1年生』は家庭料理の基本書。初心者の方がわからないこと、ベテランの方が迷っていることを網羅した本です。(3ページ この本を使われる方に より)
このように、まずは調理を始める前の身なりから書かれていて、キッチン周りのこと、火や刃物の取り扱いについてなど、小学生からでも理解できる内容になっています。
包丁とまな板の扱いに関しての説明では、包丁やまな板の種類や持ち方、置く位置、構える姿勢、切る時の動かし方、この食材にはこの包丁を使いこの切り方が適している、など説明が行き届いていると思いました。
ほかにも、はかり方について、火加減や水加減、調味料の保存方法や使用時の注意、調理道具の説明も丁寧です。
そうした説明を経てから、ようやく食材の扱いについて学んでいくことになります。野菜、魚介、肉、卵、乳製品、などの食材の見分け方、保存方法や使い方、料理によって効果的な切り方、そのほか調理の基本とコツなどなど。
それぞれにシンプルなレシピがついています。
単行本もありますが、A4サイズのワイド版が使いやすくておすすめです。
ベターホーム協会は、全国にお料理教室を展開していて、そこで講師を務めているのは主婦の方です。実は私も以前、お料理教室に参加しました。その講師である主婦の方がこちらの本の監修にも携わっているそうです。料理教室で生徒さんと対峙する中から生まれた疑問点や注意点が生かされているように感じます。
他のレシピ本でわからないことは、この本で調べる、そんな料理本の辞書として使えます。
この本が初めて出版されたのは1985年、今から35年前でした。後に加筆・修正され「新」バージョンとなって発行されたのが2015年です。
長く読み継がれるだけのことはある、土台のしっかりとした内容。初心者はもちろん、料理に慣れ親しんでいる人もぱらぱらとページをめくると以外に新しい発見が見つかる本です。
「医者いらず」の食べ物辞典
「医者いらず」の食べ物事典 (PHP文庫)
石原結實 著
家庭で料理に使う野菜、果物、魚介類その他、お馴染みの食材119点についてのコラムがまとめられています。スーパーでおなじみの食材ばかりです。
効能、由来、語源、歴史、生物学上の分類、食材の効能を生かした理想の調理法、古来から伝承される民間療法など、いろいろな情報が2~3ページに凝縮されていて、楽しく読めて役に立つ1冊。すき間時間にパラパラとめくる手軽さも◎。
メニューを考えるときのヒントにもなります。
著者は生姜紅茶やニンジン・リンゴジュースでおなじみの医学博士・石原結實氏。
この1冊で食材に関する知識がグンと広がります。
ネットやテレビ、雑誌に専門書など、料理のレシピは数限りなく出回っています。
そのレシピを使う手前で断念してしまうのは、とても残念なことです。
自分なりのアレンジはできなくても、レシピを見れば作れる、それで十分です。
ぜひ自炊の楽しさを味わってみてください。