HANAのおと

hanaの雑記帳。

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最愛の人に忘れられる日がきたらどうしますか?

絵本『とんでいったふうせんは』を知っていますか?

 

とんでいったふうせんは

ジェシー・オリベロス 文
ダナ・ウルコッテ 絵
落合恵子 訳
絵本塾出版

色とりどりの風船を握るおじいちゃんと男の子の表紙に、ほんわかと明るく楽しそうな絵本だなぁ、というイメージを持ってこの本を手に取る人が多いかもしれません。
でも実は、作者自身の祖父のアルツハイマー病発症をきっかけに書かれた物語です。
人生には試練はあるけれど希望に満ちているということを子どもたちに伝えたい
という作者ジェシー・オリベロスの思いがこめられた作品です。

ここに描かれている、おじいちゃん、ぼく、弟、パパ、ママ、そして飼い犬も、それぞれの手に風船が握られています。風船の数は、犬より弟が多く、弟よりぼく、ぼくよりパパとママ、いちばんたくさん持っているのはおじいちゃん。なぜなら、風船にはそれぞれ違った思い出がつまっているから。おじいちゃんは、いちばん年上で、たくさんの思い出を持っているからです。
ぼくは、おじいちゃんの青や紫や黄色のふうせんの中からでてくるお話が大好き。おじいちゃんとの楽しい思い出がつまった風船は、ぼくも持っていて、おそろいの銀色でした。
ところが、あるときからおじいちゃんの風船がおじいちゃんの手を離れてどこかへ飛んで行ってしまいます。おじいちゃんの様子が変です。ひとつ、また、ひとつ。おそろいの銀の風船も飛んでいってしまいました。

おじいちゃんはどうしちゃったの?
ママに、としをとるとよくあることだ、と言われても、ぼくには理解できません。
悲嘆に暮れるぼくでしたが、ある日、そんな寂しくて悲しい気持ちを軽く明るくしてくれるときが訪れます。
それは、ぼくがあることに気づき、希望を見つけたからでした。
作者の言う、人生は試練はあるけれど希望に満ちている、の言葉通りの結末を見せてくれました。

 

この絵本は、認知症について描かれています。
この本を読んだ大学生の娘は、
中学の時になくなった祖母のことを思い出して、ちょっと悲しくなった、
としんみりと感想を漏らしました。
いろいろな経験を積み、年を重ねた大人(私のことです)が読むと、切なく、涙がこぼれそうになる絵本でした。
年をとるとはどういうことか、その一端を教えてくれます。
それが自分の最愛の人でも、その人の記憶の中から自分がいなくなってしまう日がくるかもしれない、そのとき、どのように受け止めればいいのか。ということを考えさせられる絵本でした。

自分の風船をふやすためにできること

大切な人の記憶の中に自分がいなくなる、自分はその人のことが大好きなのに。
それは、認知症でなくてもあり得ることかもしれません。

『コード・ブルー』という医療ドラマで、こんなシーンがあったのを思い出しました。
ある熟年夫婦の話で、事故で脳出血を起こした夫が、助かるのは手術しかない、と告げられる。しかし、それは術後に記憶がなくなってしまうかもしれないという危険な手術だった。そして、手術後、夫は記憶をなくしてしまった。自分のことを付添人だと思っている夫。それでも妻はいつも笑顔で夫に語りかけ、献身的に看病する。そうしているうちに、夫は彼女に「ぼくと結婚してください」と照れた表情でつぶやくのだった…

 

最愛の人の手を離れ、どこかへ飛んでいってしまった風船は、取り戻すことはできませんでした。けれど、その人と語り合ったり何かをいっしょにすることで、新しい風船をふくらませることができたのかもしれない、そんなふうに思いました。
そして自分も、誰かといっしょに語り合おう、どこかへ行って体験しよう、いろんな経験や体験を重ねて湧き上がる思い、楽しかった、おもしろかった、悲しかった、つらかった、そういう感情を大切に受け止めていこう、と思います。それらは、いつしか自分の風船となって私の周りに浮かんでいるに違いない、色とどりの風船をたくさん持っていたいと思います。そして、その風船を誰かと分かち合える日がくればいいなぁ、とも思います。