『銀河鉄道の夜』の優しさと、もの悲しさを合わせたような空気感
色鉛筆で毛並みの一本一本まで緻密に描かれた動物たちは、
それはそれは美しくて。
とってもかわいらしくて。
とてもゴージャスで。
読み終えてはまた最初からページをめくる、
そんなことを何度も繰り返しました。
後を引く絵本です。
『ある星の汽車』~ずっといっしょにいたいのに、キミはなぜここで降りるの?

ある星のお話です。
月の光に照らされて白く輝く広い大地。
空には満天の星がキラキラと輝いています。
草も木もない、山も川もない、あるのは闇を照らす月と星と大地だけ。
そんな白い大地を、ある機関車が煙を吐きながら進んでいきます。
何台もの客車を牽引しながら、空と大地の間を進む汽車。
その汽車にはいろいろな動物たちが乗り合わせていました。
一人の男の子とお父さんもいます。
お父さんが眠っている間に、男の子が車内を歩きまわります。
植木鉢を抱えたドードーのおじさん
眠ってばかりのナマケモノ
和装が美しいトキのご婦人
シロクマ、パンダ、タヌキ、イリオモテヤマネコ、ツシマヤマネコ、オオカミ…
華やかに着飾った美しい動物たちが
ビロード張りのボックス席に座って
おしゃべりしたり歌ったり
賑やかな乗客をのせて汽車は進んでいきます。

やがて男の子が自分の席に戻ろうとしたとき、車掌さんがやってきます。
乗客に降りる駅を伝えるためです。
最初に汽車を降りたのは、ドードーのおじさんでした
今までそこに座っていた動物たちがいなくなる
乗客がおりて誰もいなくなった席を見ると
今まであったものを失うことの寂しさがこみあげてくるのを感じます
いなくなってしまったんだ
もうあえないんだ
ずっといっしょにはいられないんだ
と。

文字が少ないけれど、絵の中にはたくさんのメッセージが込められています。
物語の後半、
なぜ、動物たちはその駅で降りるのか、
その理由を知ったとき、胸が痛みました。
やりきれない気持ちになります。
それでも、汽車は乗客を降ろしながら先へと進んでいきます。
この絵本の編集協力には今泉忠明氏の名前がありました。
今泉氏は動物学者であり、小学生に絶大な人気を誇る『ざんねんないきもの事典』シリーズの監修を手がけた方でもあります。
作者の森氏は、「この動物はこの描き方で間違っていないか」を今泉氏に確認してもらった、とおっしゃっています。
細かいところまでこだわって作られた絵本だということがわかります。
たとえば、乗客のトキがなぜ孤独なご婦人として描かれたのか、そこにはちゃんと理由があり、事実に即して描かれているのだと知って、深い感銘を受けました。
乗客を降ろして、汽車はまた次の駅へと進みます。
ビロード張りの椅子が目立つがらんとした客車は、静かで物悲しさが漂います。
そのとき
車窓から明るい流れ星がみえました
直後に、うれしい出来事がおこります
新しいお客さんが乗ってきたのです。
その命がこの先もずっと
明るく輝くこと願わずにはいられない
そんな絵本でした。
おすすめです。
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