東京ステーションギャラリー 『もうひとつの江戸絵画 大津絵』
コロナ禍で我慢していた外出、今回は美術館へ久しぶりに出かけました。
東京駅の丸の内・北改札を出てすぐ右手に東京ステーションギャラリーがあります。
東京駅舎を利用したこじんまりとした美術館は、旧駅舎に使用されていたレンガの壁が印象的。
1階のエントランスからエレベーターで3階に。
展示室は3階と2階にあり順路は3階から2階へと続きます。
そんな素敵な東京ステーションギャラリーで現在行われているのが『もうひとつの江戸絵画 大津絵』展です。
民衆が生み出した無銘の絵画
もうひとつの江戸絵画
大津絵
期間 9月19日~11月8日
開館時間 10時~18時(金曜は20時まで)
入場料 一般 1,200円 高校・大学生 1,000円 中学生以下無料
場所 東京ステーションギャラリー
大津絵というのは、江戸時代に描かれていた絵で、滋賀県の大津から京都へ抜ける東海道の追分(おいわけ)あたりで売られていました。
江戸時代初期から東海道を行き交う人々の土産物として売られ、大変人気があったそうです。今でいうなら土産物の絵はがき、といったところでしょうか。
浮世絵よりも安価で庶民にも手に入りやすかった分、長く保存されることが少なかったそうなのです。
作者もわかっていません。
そんな大津絵ですが、その絵に魅力を感じ、蒐集した方がいらっしゃいました。この展示では、大津絵を愛した蒐集家のもとに残されている貴重な作品が多く集められています。(会期中入れ替えあり)
版画と違い、一枚一枚が手書きの肉筆画のため、同じ題材でも時代や作者によってその描き方は違います。
大きな目玉をカッと見開いた鬼もいれば、ふっと力が抜けてどことなくやさしい目の鬼もいます。
作者の気持ちがその表情に出ているのかもしれません。
同じテーマの絵がいくつも並んでいるので、くらべてみるのも楽しいです。
「阿弥陀仏」「鬼の念仏」「瓢箪鯰」「雷と太鼓」「藤娘」「猫と鼠」など、仏画、美人画、鳥獣画など題材の種類は100を越え、図柄もさまざま。
「鬼の念仏」や「藤娘」などは有名なので、大津絵の名前は知らなくてもこの絵は見たことがある、という方も多いかもしれません。
ギョロりとした目でもどこか愛嬌のある袈裟を着た赤鬼、長く垂れる藤の花を持って踊る美しい娘、大きな盃で酒をあおるネズミ、などなど
どこかユーモラスでくすっと笑える絵がズラリ。
自分好みの絵を探すのも楽しいですよ。
東京ステーションギャラリー http://www.oumiarare.co.jp/syouhin.html
公式アクセスマップ http://www.ejrcf.or.jp/gallery/access.html
チケット購入について
現在は、ローソンチケットでインターネット予約し、ローソンまたはミニストップ店内設置の販売機で購入することになっています。
上記のように案内には書かれていますので、前もって購入されることをおすすめしますが、私が行った時(平日の夕方、雨天)は予約枚数に余裕があったため、入口でチケット購入できました。
チケットがない、とあきらめる前に受付で尋ねてみると、案外入れるかもしれませんよ。
アットホームで居心地の良い時間でした~大津絵展の感想
私の故郷は大津です。
今になって思い返すと、私は幼い頃から大津絵を身近に感じる中で育っていました。あまり自覚はなかったのですが。
大津絵の焼き印のはいった大津絵煎餅は大好物でしたし、小袋に大津絵が描かれたあられ(近江あられ)はお使い物に贈ったり贈られたり。
ほかにも、特別な絵というよりは、ああ、大津絵ね~、という感じでした。
大津絵煎餅 大忠堂 http://www.daichudo.com/otsuesembei.html
近江あられ 中西永生堂 http://www.oumiarare.co.jp/syouhin.html
そしてまた、父が趣味で大津絵を描くのが好きで、よく描いていたのも(現在も)身近に感じる原因です。
絵の練習に使った和紙(私が学校の習字で余った半紙)や色紙がウチの中のに散らばっていたので、よけいにありがたみ?がなかったのかも。
夏休みや冬休み、孫がくるといっしょに描いて遊んでいてので、子どもたちにもおなじみです。
そんなこんなで、あまりにも身近にありすぎたせいか、大津絵の歴史的・芸術的な価値について考えたことはありませんでした。
ですから、この展示を知ったときは、
えッ、あの大津絵が?
って、びっくりしました。
まるで自分の知り合いの作品が有名になったかのようなうれしさです。
そして、展示の紹介文の中で芸術に疎い私でも知っている方、たとえば棟方志功、田河水泡、白洲正子、ミロ、ピカソなど、が大津絵を好んで求め、手元に置いていていたこと知り、ますます驚きました。
鬼の顏も、藤娘も、トラや猫やニワトリも、懐かしさと共に私の中にすんなりと入ってきて、とてもアットホームな雰囲気の中でゆったりと鑑賞することができました。
大津絵をあのピカソも知ってた、そして持っていてくれた!
それがわかっただけでも大収穫。
顔がくっつくほど近づけてじーっくり見ることができるのもあって、堪能できました。
今も大津絵は描かれています
江戸初期に生まれた大津絵は、現在も大津で描かれています。
大津絵の唯一の絵師、五代目高橋松山(しょうざん)の手によって、今も江戸時代と変わらず手描きで描き続けられています。
大津には高橋松山さんのお店もあり、大津絵を施した民芸品なども販売されています。
琵琶湖疎水、三井寺など景勝地のそば。
比叡山へもそんなに遠くない距離です。
★「大津絵の店」
滋賀県大津市三井寺町3-38
TEL 077-524-5656
さいごに
以前父からもらった絵に、大津絵十種(十人衆)というのがあるので、紹介します。
大津絵の題材として代表的な10種類が一堂に会した絵です。個々の絵はそれぞれに護符(御守)として効用も唱えられたそうです。
その10種類をまとめて一つの絵にすることですべての効用を盛り込んだありがたい1枚になっています。
★大津絵十種(十人衆)
・鬼の寒念仏(小児の夜泣き止めの符)
・藤娘(良縁の符)
・弁慶(身体剛健)
・雷公(雷除け)
・座頭(倒れぬ府)
・矢の根(目的貫徹)
・長頭翁(無病長寿)
・槍持奴(道中安全)
・瓢箪鯰(水難除け・諸事円満解決)
そしてこちらが十人衆の絵 です