HANAのおと

50代主婦hanaの雑記帳。おもしろい、役に立つ、覚えておきたいことをあれこれと書いています

泣いて笑って、笑って泣いて『一富士茄子牛焦げルギー』

  

この本を見つけたのは今年お正月あけでした。

『一富士茄子牛焦げルギー』これは「いちふじ なすうし こげるぎい」と読みます。

なんやこれ?

意味がさっぱりわからない、

こんな突拍子もない題名は聞いたことがない、

と、一度は素通りしたものの、やっぱり気になって本の扉を開けていました。

ポンポンとテンポよく飛び出す関西弁の会話がとてもリアルで、ふだんこういう会話から遠ざかってしまった身には懐かしさが先に立ち、ぐいぐいと引きずり込まれていきました。

 

 一富士茄子牛焦げルギー

 

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たなかしん・作 BL出版

 

あらすじ

主人公のぼくは中学3年生でおとんと仲良く暮らしています。

正月の朝、おとんが見た夢の話を語り始めるところから物語が始まります。

 

その夢とは、自分が牛みたいな大きい茄子に乗って富士山の山頂に行き、たまたま持っていた餅を富士山に食べさせてあげたら、餅のお礼に何か願いをかなえてあげるというので、「餅がこげへんようにしてください」とおねがいした。そうしたら、「お安い御用です。それだけでは申しわけないから、もう一つぐらい願いがあればぜひに」といわれたので「ほんなら息子に願いをたくすから、聞いたってくれませんか」というと、富士山は快く承知してくれた、というものです。

 

わけがわかりませんが、夢だから何でもありなのです。

でもそのあと、ぼくが餅の焼け具合をみて、それが夢じゃなかったとわかるところから話は意外な方へと進んでいきます。

 

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オーブントースターで10分以上焼いても餅が焦げない

これはえらいことになった、

餅を焦げないようにしてくださいという願いを取り消しに行こう、

とおとんは寝ようとします、が、どうやっても眠れない。そのうち、願う権利はお前にゆずったんやから、お前が寝てこい、とぼくが寝ることになるのです。でも、そのときぼくが願ったことは、餅を焦げないようにしてください、ではありませんでした。

おとんには「それはあかんのや」といわれたけれど、かなえてほしいこと。

それは

「おかんを生き返らせてもらおう」

という願いでした。

 

 

ここから、ぼくの述懐がはじまります。

小学6年生のお正月、事故でなくなったおかん。陽気で夫婦漫才をしているようなおとんとおかんが大好きだったぼく。

おかんを失った悲しみは、中学生になったぼくの中で消えることはありませんでした。おかんのことを知らない友だちを作りたい、そう思いながら3年目の中学生活をむかえ、ようやくケンという仲のよい友だちができます。

ツンツン頭のロックなケンに「メリー」というあだ名をつけられ、だんだんクラスの中で存在を認識してもらえるようになったぼく。

メリケンで漫才でもやれや

あほ!やるならバンドやろ?

 名コンビの誕生です。

でも、そんなケンが2学期の終わりに引っ越すことになります。

いつも無邪気にゲラゲラ笑うケンをみて、ケンは幸せな毎日を送ってきたんやろうな、と思っていたけど、ケンの口から語られた意外な真実、言葉につまるぼくでした。

 

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おとんにも秘密がありました。

おかんが亡くなった原因は、飲酒運転でした。おとんはおかんを死に追いやった相手の居場所を突き止め、復讐を試みたといいます。でも、それは未遂に終わりました。ここでは、おとんのおかんへの深い愛情が語られています。

 

おとんから夢のお願いの権利をゆずられたぼくは、最後にはなんとかあの夢にたどり着くことができます。

そこでおとんが乗った茄子牛や、餅をあげた富士山にも会うことができます。

そして、ぼくの願いは……

涙なくしては語れない、結末へとつながっていきます。

 

 

父と子の泣き笑いの日常にバスタオル級のもらい泣き

 

 

ぼくとおとんのつらい思い、ケンのロックな生き方。

おとんの秘密、おとんとおかんのやさしさ。

餅を焼きながらおかんを思い出したり、おとんのトレーナーからケンを思い出したり、ふとした情景や会話の先にあるぼくの話に泣かされました。

でも、泣かしておしまいではなく、最後に笑いを取りに来るところが、物語にも出てくるぼくの「関西病」みたいです。

主役のアホなボンに泣かされながら最後は笑って手をたたくお客さんたち、小さい頃に見た藤山寛美さんの新喜劇を思い出しました。

 

あとがきには、作者たなかしん氏のこんな言葉がありました。

生きていればいろんなことがある、何が起こるか分からない、

この世では大事件がなくても人は傷つき、心を痛めてしまいます。ちょっとしたことがきっかけで、どんどん闇に落ちてしまいます。それでも、ゆっくりでいいから光を探してほしいのです。(後略)

 

おとんとおかん、おとんとぼく、おかんとぼく、ケンとぼくでお約束のように交わされるボケと突っ込み、本音を笑いでごまかしてしまうシャイな気質、泣きながらも最後はオチをつけてしまう病気。

この物語の芯にあるのは悲しい現実ですが、おとんとぼくはそれを受け入れ、思い切り泣いた後、笑いながら一歩前に踏み出していきます。

笑えるっていいことだなぁ、と改めて感じました。

元気がなくなりそうになったとき、何度でも読み返したくなる1冊です。

 

 

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