NHKのEテレで2月8日から毎週月曜に放映中のドラマ「ハルカの光」を見ています。毎回登場する芸術的な照明器具の灯に癒される30分、ホッとするひとときです。
さて、今回は第4話。今回と次回でもう終わってしまうのが本当に惜しい。
もっといろんな照明を見せてほしい!
回を追うごとにハマっている自分がいます。
「ハルカの光」のオープニングは、遊び心たっぷりで、毎回違った趣向が凝らされています。
第1話では遠くの灯を見つめ帰還を待つ艦隊の隊員ハルカ(宇宙戦艦ヤマト?)、第2話は何かいいことありそう!ワクワクして「ピタゴラスイッチ」のメロディーを口ずさむハルカ、第3話は夜明けの街を駆けるロッキーを支えるエイドリアン風ハルカ。
オープニングに合わせてBGMもタイトル(ハルカの光)の書体や出し方も全部違うんです。
で、今回のオープニング曲は「ムーンリバー」。静かなはじまりです。
仕事を終えて店から出た彼女は、ガラスの向こうにある丸い形のやわらかい光を放つ照明を見つめています。それがいつしか過去の自分になり、涙を流しながら同じあかりを見つめている。第4話はハルカと《eclat》のオーナーとの出会いからのスタートです。
ハルカの光 第4話
今回お店にやってきたのは、謎の女性。
体のラインがバッチリわかる、黒のドレスをエレガントに着こなした彼女。
お店の照明器具に近寄り、
「人間に例えるなら、大胆で芯のあるやさしい男。この子はそういう光よね」
カスティリオーネ兄弟のアルコランプ
「この子は一見デザイン性だけを重視しているように見えるけど、実は合理的で、人々の暮らしに寄り添っている。そう思わない?」
といかにも照明器具に詳しそうです。
照明をこの子と呼ぶあたり、何かワケありな予感です。
「この子を生んだのは、イタリア人デザイナーのリヴィオ・カスティリオーネとジャコモ・カスティリオーネ兄弟です…」
彼女はまるでいつものハルカのように、その灯について語ります。この照明がどんなふうにして生まれたのか、どんな特徴を持っているのか。
照明器具をこの子と呼び、愛情をこめて語る彼女はいったい何者なのでしょう?
実は以前、第2話の中で、お店のオーナーがワン・フロム・ザ・ハートというハート形のオブジェのようなかわいらしい照明を持っているという件がありました。
照明器具をさがしに海外を放浪していたときに見つけ、奥さんへの贈り物にと買って帰ったら、家には誰もいなくて肝心の奥さんは愛想をつかして出て行っちゃった、という話です。
読めました。よね。
別の照明器具に手をかざしながら黒いドレスの女性が大切な人のことを話します。
その人は照明に詳しくて、
光に魂をささげてしまって、
光と心中したの
だと。
そして
「だから、私は光が好きじゃない」
ときっぱり。
では、なぜ店にやってきたのでしょう?
実は、彼女は大切な人と離れて海外で暮らす、という新たな道へ踏み出す決心をしていたのです。
ただ、不安でもあった。
光に自分の決断が正しかったのかを聞きたかったんですって。
光に道を示してほしかったのかもしれません。
そして、ある光の下に手をかざす彼女。
その光は、
思うように進んで大丈夫だ、
と語りかけてくれたそうです。
この子の光は、見る人が求める光、その人の人生に足りない部分を補ってくれる光、ハルカはそんなふうに言っていました。
ハルカのこと
「光が好きじゃない」と言い放つ彼女に少し驚いたハルカでしたが
でも彼女の言葉に共感し
「わかります」
と答えてました。
「光を見ていると前向きになれるけど苦い過去を思い出す、現実を明るくともすのに過去に引き戻されることもある、だから好きだけどキライというか逃げたくなることもある」
と打ち明けました。
そして、自身の過去についても。
10年前の震災で被災したが、家族は全員無事だった。しかし、それまで明るく笑顔を絶やすことがなった母から笑顔が消えてしまったのが辛かった。母は、周囲の人々の目を気にして「今は笑うときじゃない」と言い、娘にさえも笑顔を見せなくなったのです。そんな中、悲しみからハルカを救ってくれた光がありました。震災から1年たってやっと漁を再開できた父の船の漁火です。真っ暗な海の向こうに小さな灯が見え、少しずつ明るくなっていく光、カメラは港で船をじっと待つ少女の顔をアップで捉えます。彼女の顏だんだん明るくはっきりと映し出されました。
自分を救ってくれた光は、明るい希望も暗い思い出もある持ち合わせている、どんなものも裏と表があって一つ、なんですね。
HERE COMES THE SUN ~あたらしい一歩をふみだす灯
黒いドレスの彼女とハルカに新しい道を示した光。
それはHERE COMES THE SUN というあかりです。
ビートルズの歌のタイトルからヒントを得たあかりはフランスの建築家、ベルトラン・バラスがガロンヌ川に沈む夕日からデザインしたもの。下方には直接光、シェードの中央からは間接光が放たれて、その光は見る人によって昼間の太陽やしずむ夕陽、あるいは月の光にも感じられる、それがHERE COMES THE SUN の光なのです。(ハルカの解説より)
一方、灯のタイトルに使われたビートルズの原曲は、1969年4月、ジョージ・ハリスンが、親友のエリック・クラプトンの家で春の柔らかな日差しを感じて書いたとされる曲です。
太陽は昇る
みんなに笑顔が戻ってきたよ
氷はとけていく
もう大丈夫
もう大丈夫
そんな歌詞はこの灯によく似合っています。
ドラマの最後に店のオーナーがギターを弾きながらこの曲を歌うシーンがありました。
謎の女性は、彼のもと妻でした。
彼の奏でる HERE COMES THE SUN は、彼女の新しい旅立ちを励ましているようにも、また、彼自身のさみしさを励ましているようにも聞こえました。
「月の川」で始まり「太陽が昇って」終わる、洒落っ気たっぷりの第4話。
素敵なあかりと心あたたまるストーリ、今回も心が和むひとときでした。
放送予定
NHK・Eテレ
2021年2月8日から毎週月曜
19:25~19:50
作・矢島弘一
出演・黒島結菜(ハルカ)、古舘寛治(店主)、イッセー尾形(1話)塩見三省、辰巳良太郎(2話)、駿河太郎、内田慈(3話)、緒川たまき(4話)、山下容莉枝 田牧そら 甲本雅裕