2月8日からEテレで始まったドラマ「ハルカの光」。
ご存知ですか?
このドラマ、北欧のうっとりするような名作照明とその灯がつなぐヒューマンドラマが楽しめる「一粒で二度おいしい!」まるでアーモンドグリコ(!)みたいなおいしい内容でした。
照明器具に魅せられた女性ハルカとハルカの愛する北欧の名作照明、両方が主役とも言えるドラマです。
彼女の勤める店《eclat》には、北欧の照明器具がズラリ。
芸術品のように洗練されたデザインと暗闇を照らす美しい光にうっとり。
光がくれるあたたかさ、やさしさを感じることができるドラマです。
名作照明オタクのハルカ
ドラマは暗い港で漁船の漁火を見つめるハルカの姿から始まります。
ただこの漁火にどんな意味があるのかは明かされていません。
1年前、東京で保険の外交員だったハルカは、お客のセクハラ発言に傷つき落ち込んだ帰り道、ある店の前に立ちつくし、涙を流し続けます。
そこは《eclat》という照明器具の専門店でした。
大きな一枚ガラスの向こうには、柔らかな光を放つペンダントライトがありました。
その光を見つめながら泣いていたハルカを、心優しいオーナーは店番に雇ってくれました。
1年たった今、照明を愛してやまないハルカは、
私はいつも光のことを考えていたいの、
と恋人よりも光を選ぶほど照明の虜になっていました。
店の商品(照明)はどれもわが子のようにかわいがり、「かわいいね」と声をかけながらみがき、お客さんに勧めるときは「この子」と呼んで紹介するほどの変り者。
恋人は呆れて去って行ってしまいます。
アルヴァ&アイノ・アルルトのゴールデンベル
そんなハルカのもとに、一人のお客がやってきます。
彼はその道一筋のすし屋の大将。店の電球が切れてしまい、代わりの電球を買いに来たのです。
ぴかぴか光る電球なら何でもいいから電球を売ってくれ、と。
照明器具一つ一つに愛情を注いでいるハルカです。
光るなら何でもいいから電球をくれ
なんていわれたら、激怒します。
ここにはあなたのような人に売る電球はありません
と大将を追い出してしまいます。
ところがその大将、いったんは帰ったものの、再び店にやってきます。
ハルカの《照明愛》に自分と同じ職人気質を感じ、ハルカを気に入ったようです。
こんどは照明を買いに来たんだ、見せてくれ、と。
どうぞ
と奥へ案内するハルカ。
店の中を見て回るうち、一つのライトの前で彼が足を止めます。
その照明の光を掌で受け止めて、光の感触を確かめます。その掌はオレンジ色に照らされてとても温かそうに見えました。
彼が目を留めたのはこのライトです。
1937年 ゴールデンベル
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これはフィンランドの建築家、アルヴァ・アアルトが妻のアルヴァ・アイノと共に作った作品です。
このライトの光を受けながら
この光はなぜあったかいんだ?
と尋ねる大将にハルカの答えはこうでした。
この子は接合を施さない1枚の真鍮で作られていて、使い込むほどに味わい深くなっていきます。消して派手ではありませんがこの子が持つ独特の曲線と真鍮が持つ黄色い色合いが、温かみに満ちた光を生み出す、それはきっと人が集まる光なんだと思います。と。
そして、アルヴァ夫妻について、
妻のアイノは55歳で亡くなってしったのは残念ですが、二人は長く同じ職場で働き、どちらか一方が前に出ることはなくいつもいっしょだった。この光は二人がいっしょに作り出したものなのです。と。
このライトは大将のもとに引き取られていきます。
実は彼には妻に先立たれた建築家と同じ過去があったのですが、アルヴァ夫妻の光は彼の心に温かい灯をともしてくれた、そんなエンディングでした。
第1話のトップバッターとしてに登場した照明器具は、オーナーのお気に入りのライトです。その子についてはこちらの記事で紹介しています。
ドラマ「ハルカの光」~店のオーナーのお気に入りライトのこと - HANAのおと
新感覚のドラマの魅力
お店の照明器具はため息が漏れそうなほどどれもが美しく、何時間でも見ていられそうでした。
カメラはその芸術作品を、上から下からゆっくりと捉え、光の温かさ、やわらかさまで伝えてくれます。
たき火の動画なら何時間でも見ていられる、という人がいますが、それと全く同じで、名作照明の灯はいつまで見ていても飽きないです。
照明の魅力やその背景について語るハルカの解説はとてもわかりやすく、実際に欲しくなってしまいます。
毎回、スポットを当てて紹介される名作照明が楽しみでなりません。
冒頭の漁火とハルカ、ハルカの過去と未来、店に来る人々の人生、こうしたことが回を重ねるごとに深まっていきます。と同時に、店に飾られた美しい照明への知識も深まるという今までに見たことのない新感覚のドラマ、次回も楽しみです。
放送予定
2021年2月8日から毎週月曜
19:25~19:50
作・矢島弘一
出演・黒島結菜(ハルカ)、古舘寛治(店主)、イッセー尾形(1話)塩見三省、辰巳良太郎(2話)ほか
本の紹介『北欧の照明』
暗くて長い冬の間、室内で暮らす時間を楽しむため、北欧では優れた照明器具が多数生みだされ、 建築や都市空間を彩る照明手法が発達しました。
本書では、ポール・ヘニングセンやアルヴァ・アアルトら、北欧のデザイナーや建築家11人が手がけた100の名作について、デザインと機能、空間の照明手法を500点に及ぶ写真と図面で紹介されています。(Amazon内容紹介より)
【ドラマ】「ハルカの光」~店のオーナーのお気に入りライトのこと - HANAのおと
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