日が暮れる頃
ほのかに漂う甘い香りは
今夜咲くのを知らせる合図
キュッと固まっていた蕾はふんわりとふくらみ、ゆっくりと開きはじめる
真夜中、ひとつひとつの花びらを先までピンとのばし、大きな花になる
夜行性の生き物を誘惑する香りは、さらに甘く濃くあたり一面に漂う
真っ暗な闇に咲く純白の花
それが月下美人
夜が明ける頃、力つきてだらりと垂れた花
数時間前の輝きはもうどこにもない
もう二度とその花びらを開くことはない
月下美人 一夜限りの美しい花
-by HANA
ベランダの月下美人
ウチのベランダには、かれこれ20年近く生きながらえている月下美人の鉢植えがあります。
豪雨や暴風に負けず、猛暑や寒さに耐え、ベランダで強くたくましく生きています。
もともとは、実家の母がご近所さんから分けてもらった月下美人を増やし、根付いた中の一鉢をもらってきたのが始まりでした。
夏も冬も1年中ベランダに置きっぱなしなので、途中、緑の葉が黄色くなって枯れたりしたこともあるのですが、残った緑の葉を切って土に差しておくとそこから根が出て(葉から根が出るんです!)成長し、世代は変われど絶えることなく生きているというわけです。
月下美人ってどんな植物?
月下美人がどんな植物か、簡単に紹介します。
月下美人はサボテンの仲間です。
メキシコから中南米の熱帯雨林地帯を原産地とするサボテン科の常緑多肉植物です。
サボテンと言ってもチクチクした棘はありません。
葉のように見える平たく緑の細い昆布のような形をしているものが実は茎で、葉状茎と呼ばれています。その葉状茎が大きくなると縁のくぼみから芽が出てきてそれが大きくなるとまた葉状茎になる、その繰り返しで大きく育っていきます。
この写真は、現在のわが家の月下美人です。
手入れが行き届かずほったらかしなので、葉状茎が好き勝手に伸びていています。
夏になると葉状茎の縁のくぼみから葉状茎の芽と同じように花芽も出てくることがあります。
最初はその芽が葉状茎なのか花になるのか区別がつかないのですが、すこし伸びてくると形が明らかに違うので花芽だとわかります。
花芽が出てくることもある、と書きましたが、裏を返せば、その年によって出てこないこともある、ということなんです。
月下美人は、毎年花をつけるというわけではなく、しばらく咲かないときもあれば、続けて咲くこともあるそうです。
ウチの月下美人も2,3年咲かなかったり、そうかと思えば2年連続で咲いたり、という
こともありました。
きっと、その時の栄養状態や天候、環境などの影響があるんだと思います。
葉のフチから葉が生えてくる?
月下美人は花も特徴的ですが、葉もおもしろいです。
下の写真は、葉状茎から芽が出てきたところ。
黄色い丸で囲ったのが芽です。
小さいのでよく見てくださいね。
しばらくすると黄色い矢印の先、くぼんだ所から芽が出てきます。
黄色い◯で囲ったの葉状茎の芽、わかりましたか?
この芽が少したつと、下の次の写真のようになるんです。
葉状茎の芽が伸びるとこんなふうに葉の縁から葉が生えてきたみたいに見えます。
この新しい葉状茎も大きくなるとまたその縁から芽がでてくるので、どんどん葉状茎が増えていきます。
そして、時々、棒のようなシューッと伸びた茎が出てくることがあって、50センチくらい伸びたこともありますが、それも最終的には葉状茎になっていきます。
葉っぱが葉っぱを生んでいるみたいでいつ見ても不思議です。
葉の下から根が生えてくる?
先ほど、黄色くなって枯れそうになったことがあって、そのとき緑色の葉状茎を切って土に差したら根付いた、とかきました。
月下美人を増やすときは、葉を切って土に差しておけば根が生えてきます。
以前、葉を切って水に入れておいたことがあります。
下の写真はその時のものです。
しばらくたつと、根っこが出てきました。
わかりやすいように水から出した写真も載せておきます。
しっぽが生えたみたいでしょ!
土に差しておくと、こんなふうに葉状茎の中心から根が出てくるんですね。
おもしろいです。
そんなふうにして増やした鉢がこれです。
葉っぱが傷んでいますが、ココからちゃんと育てれば大丈夫。
いずれは、こんなふうになります。
これが花になるの!?
ここからは、花が咲くときの様子を紹介します。
まず、先ほどの葉状茎から出てきた花芽が少し伸びたのが下の写真。
初めてこれをみた時は、色も形も、なんだか不気味な感じがしました。
棘の生えたようなつぼみ、緑と茶色の中間みたいな色、微妙な感じです。
この花芽は翌日になると、大きくなったなと見てわかるくらい成長していました。
計ってみたら6センチくらい。
花芽は色も形も少しずつ変化していきます。
そして、 花芽の成長はとても速いです。
上の写真から三日ほどたった花芽を下から撮影してみました。
カッコよく撮れました。
この後にまた変化が見られます。
まっすぐ下を向いていた花芽の先は、少し横を向き始めました。
長さは17センチくらい。
先の方に丸みが出てきました。
さらに1日経つと、花の先がナナメ上に向き始めました。
その三日後、全体がフラミンゴのように紅色に染まり、あと一日で開くところまで来ました!
さて、ここで少しお断りしておかなければいけないことがあります。
ここまでの花芽の成長は、実は昨年の8月に撮影したものです。
この後、この花芽は強風のために根元から落ちてしまいました。
あと少しで開花できたのに、かわいそうなことをしてしまいました。
来年花芽がついたら、絶対咲かせるよ、
落ちてしまった花芽に謝りました。
月下美人が咲きました
昨年の8月に落ちてしまった花芽。
そのあと、もう一つ伸びてきた花芽もあったのですが、出てきたのが10月で、気温が上がらず、成長が途中で止まってしまい、結局、花にはなりませんでした。
そんなことがあって、今年の月下美人はというと…
うれしいことに、早くも6月に花芽がついたんです。
これまでは、早くても7月の終わりで、6月に花芽がついたのは初めてです。
ここからは今年の花芽を紹介します。
早くも17センチまで伸びています。
実は、昨年は毎日のように写真にとっていたのです。(ブログに紹介する気満々でした)
が、今回はあまりいじらずそっとしておいて、咲いたら撮ることにしました。
そして、とうとうその日がやってきました!!
仕事から帰って夜8時ごろ、ベランダに出てみたら、もう開いていました。
でも、まだ全開ではありません。
あたり一面、ユリのようなジャスミンのような甘い香りがします。
この香りは周囲10メートルくらいまで広がるそうです。
昔、部屋の中に入れた時は部屋中が花の香に包まれて、うっとりしました。
もう少し時間をおいてみます。
撮影時間は23時40分です。
この辺りが全開かなと思われます。
花の中から白い手が「おいでおいで」とコウモリを呼び寄せているようです。
コウモリは花の上でホバリングしながら密を舐めるそうです。
白い手のように見えるのが雌しべで、奥にある黄色いのが雄しべ、雄しべの数がすごいですね。
そして、翌朝
一夜限りのショーを終えた月下美人は、力尽きてぐったりしていました。
昨夜はお疲れさまでした。
あんなに良い香りがしていたのに、朝になると全く香りも残っていません。
実はこの花、食べることができるそうなのですが、土に返してあげました。
開花は1度きりではない
月下美人の花は、咲くのは1夜限りですが、花がつくのは1度きりではありません。
私の実家ではひと夏で2,3回花をつけたこともあります。
今年はわが家も第1弾が早い時期に咲いたので、もしかすると8月、9月ごろにもう一度花を見られるかもしれません。
花が終った鉢にはご苦労さまのお礼肥えをして、別の鉢の成長にも期待しています。
もし咲きそうになったら、お知らせするかも…そのときはおつき合い下さい。