夜空を見上げたとき、ぽっかりまあるい月が出ていると、ホッとします。
あっ、お久しぶり!
って。なんだか懐かしい人にあったみたい。
夜空を明るく照らす月。
大人も子どもも、人も動物も植物も、街も森も山も海も、みんな月のやわらかい光のなかにつつまれていきます。
そんな月の絵本を紹介します。
きょうは そらに まるいつき
『きょうは そらに まるいつき』
荒井良二 絵・文
偕成社
日が暮れて、空に月がのぼりました。
街中で家路を急ぐお母さんが赤いバギーを押しています。
バギーの中でが、赤ちゃんがまあるい月を見ています。
街角では、バレエのレッスンを終えて家路につく女の子が、バスを待っています。
髪を後ろでキュッとまとめ、黒い細身のパンツに鮮やかな赤いシャツ。
スラリとして素敵です。
女の子はバスの窓ごしに月を見上げています。
憧れのバレリーナを思い浮かべているのでしょうか?
彼女が乗っているバスに、別の停留所から乗ってきた男の子。
町で運動靴を買って帰る途中です。
座席で大事そうに抱えているのはスパイクシューズが入った箱。
彼もバスの窓から月を見上げています。
トップでゴールを駆け抜けるランナーを夢見ているのでしょうか?
大通りのお店の戸を閉める洋服屋さんの親子、お母さんと女の子。
一日の仕事の終わりを月が見届けます。
森のそばの広場では、明るいライトに照らされて、色も形も違うたくさんのテントがならびます。
その周りにあつまってくる人びと、
お祭りが始まりそうです。
食事の片づけをするおじいさんとおばあさん
たっぷり遊んだ子グマたちを連れて、森の奥へと帰っていくお母さんグマ
遠い海では、月の光でキラキラと輝く海面から、黒くて大きなクジラが跳ねました
さあ、これからがわれらの時間!とばかりに、あちらこちらから集まってきたネコたち
みんなが見上げる空には、まあるい月が出ています。
今夜の月は、ほんとうに美しい月です。
さっきの赤ちゃんとお母さんは家に帰ってきました。
今度はベッドの上から月を見ています。
あ、赤ちゃんが笑っています。月にとっても素敵なものが見えたからです。
赤ちゃんの見ている月は、花や動物たちのカーニバルみたい。
まぶしいほどに明るい光を放ち、楽しい世界を見せてくれます。
高い建物の窓から見えるのは、ギターを弾いている男の人。
一心不乱に同じ曲を練習しています。
別の窓から見えるのは、さっきバスに乗っていた女の子でしょうか、部屋に戻ってから、またバレエの練習をしています。
なにかに向かってがんばる彼らを、月は明るく照らしています。
子どもの時に見た月は、ワクワクするような、明るく楽しい気持ちにさせてくれました。
大人になって見る月は、今日も一日ご苦労さん、とねぎらってくれます。
同じ月でも、見る人によって感じ方は十人十色。
年齢や環境、住んでいる場所によってみんなちがいます。
でも、見る人の心に寄り添ってくれる月の光はやさしい。
この絵本には、そんな月の光があふれています。
気持ちをふっと軽くしてくれる、安らかにな気持ちにしてくれる作品です。
疲れた時に見るだけで、癒されます。
お時間ある時に、手に取ってみてください。
今日も一日お疲れさまでした。