先日、ちょっと面白そうな本を見つけました。
テーブルに置いてあるその本を見つけた娘、パラパラとめくりながら言いました。
これ、イギリスの本でしょ!
あたり!よくわかったね
表紙の感じでわかった! あと、挿絵がイギリスっぽいからね。
確かに!
赤い2階建てのバス、ですからね。
バスに乗っているキャラクターたちは、ほのぼのとした雰囲気。
愛嬌があってかわいいです。
この記事ではこのかわいい本「ねこと王さま」について紹介していきます。
ねこと王さま
ねこと王さま
ニック・シャラット (作・絵)
市田泉 (訳)
徳間書店
内容紹介
さて、本の内容について短くまとめると、こんな感じです。
ある日、ドラゴンのせいで、おしろがもえてしまった王さまは、いちばんのともだちのねこといっしょに、町へひっこして、小さな家にくらすことになりました。「王さまのしごと」のほかには、何もできなかった王さまでしたが…?少しずつ、いろいろなことができるようになる王さまと、王さま思いのかしこいねこの、ユーモラスで心あたたまる物語。 英国のアリゲーターズ・マウス賞受賞。小学校低・中学年~。(Amazon内容紹介より引用)
もう少し知りたい方は続きをご覧ください。
先述のとおり、このお話の主人公はねこと王さまです。
そのねこというのが、実に素晴らしくて、ねことは思えない、まるで王さまの執事のようなのです。王さまの身の回りの世話は、すべてこのねこがとり仕切っています。お城で召使いたちに指示を出していたのもねこでした。
あるとき、王さまのお城はドラゴンの吐く炎で焼き尽くされてしまいます。
お城を失った王さまには、12人の召使いがいたのですが、お城が焼けた時に彼らはお城を出て行ってしまいました。
住むところも召使いも失ってしまった王さまは、ねことふたりである町の小さな家に住むことになります。
そこにはお城で腰かけていた宝石の付いたひじかけ椅子も、お城の庭のメリーゴーランドも、決まった時間にやってきておもしろい話を聞かせてくれる道化師も、大勢の人の前で話をする場所もありません。
今までのお城の生活とはがらりと変わった生活ですが、王さまはその生活がイヤになったりはしませんでした。
なぜなら、いつもそばに機転が利くねこがいたからです。
新しい場所に住むことになってからも、ねこは王さまにとてもよく仕えています。実は、車の運転もできればお金の管理もできる、DIYや料理もできるスーパーキャットなのです。
うちにもきてほしい!
こうして、ねこのおかげで、毎日を楽しむことができた王さまでした。
王さまの新生活は、お隣さんの一家も加わって、ますます楽しくなっていきます。
ところが、そこに、王さまのお城を焼き尽くしたドラゴンが再びあらわれました。
王さまの新しいお家も、炎で焼き尽くそうとやってきた火を吐くドラゴン。
王さまたちはいったいどうなるのでしょう!!
続きはぜひ読んでみてくださいね。
英国の書店Alligator's Mouthのおすすめの本
ところで、先ほどの内容紹介にこの「ねこと王さま」が英国のアリゲーターズ・マウス賞を受賞と書かれていましたが、そのアリゲーターズ・マウス賞とはどんな賞かご存知ですか?
初めて聞いたね。アリゲーターのマウスってことは「ワニの口賞」?
ふしぎな名前の賞ですね。
いったいどんな賞なのかと調べてみたら、英国・ロンドンにあるAlligator's Mouthという子どもの本の専門店で創設された賞だということがわかりました。
こちらは「ねこと王さま」の受賞に関するのツイートです。
We are delighted to announce that Nice Work for the Cat and the King written and illustrated by @NickSharratt1 (Alison Green Books, @scholasticuk) has won the very first Alligator’s Mouth Award for early illustrated fiction, in partnership with @BrightAgencyUK. #AlligatorsAward pic.twitter.com/RqXvMw79jz
— Alligator's Mouth (@alligatorsmouth) 2019年6月13日
出版社にも問い合わせてみたら、お返事をいただきましたので紹介します。
このたびは、お問い合わせをいただきまして、ありがとうございました。
また、「ねこと王さま」をお読みいただきまして、ありがとうございます。
「アリゲーターズ・マウス賞」は、英国の児童書専門店「アリゲーターズ・マウス」が創設しました。
英国では、絵本作品を対象にしたケイト・グリーナウェイ賞や、児童文学作品を対象にしたカーネギー賞がありますが、この「アリゲーターズ・マウス賞」が対象としているのは、絵本から児童文学へと移行する子どもたちに向けた、幼年向きの児童文学作品です。
選定者は、同書店の経営者、過去の受賞者、イラストレーター、教師です。
この賞は、この児童書専門店が近年立ち上げたプロジェクトですので、知名度はまだまだ低いと存じますが、英国の児童書に興味のある方々には知られてきているようです。
また、同書店は比較的新しいお店ですが、英国のなかでも存在感のある児童書専門店です。(徳間書店・児童書編集曲児童書編集部より)
後で紹介しますが、現地の書店を取材された記事にあったスタッフの方のこんな言葉が印象的でした。
「本好きになれるかどうかの運命の分かれ道になる年齢が、6~8歳。自分で文が読めるようになるこの頃に、挿絵も内容も優れた幼年文学に出会って自分で本を読む楽しさを発見できれば、その後も自然と読書に親しんでいくものなのだ」(後述の記事より引用)
アリゲーターズ・マウス賞とは、自分で本を読めるようになった年頃の子どもたちに、本を読む楽しさを届けたい、という思いから設立された賞だったのですね。
Bookshop Alligator's Mouth のこと
先ほどから何度か登場している書店、Alligator's Mouth はロンドンのリッチモンドにある児童書の専門店です。
この書店については、2017年に書かれたこの記事に詳しく紹介されていました。
写真がたくさん載っていて素敵なお店の雰囲気が伝わってくる記事ですよ!
こちらの記事によると、
もともと英国で全国的に知られ、地元の親子にもし親しまれていた児童書店ライオン&ユニコーンという書店が、止む追えぬ事情で閉店した後を受けできた書店で
同店の店員だったマーガレット・ワラス=ジョーンズさんとトニー・ウエストさん、さらにロンドン西部のフラムにある独立系書店ノマド・ブックスで書店員を務めていたアーティスト兼デザイナーのマーク・ペンブレイさんによって運営されている。
「子どもの本に、その存在意義にふさわしい空間を与えるため」に児童書専門店というこだわりを持っていて、「ひとりひとりの子にふさわしい本を、ふさわしいタイミングで見つけること」「すべての読者に本を届けること」がお店のモットー。
地元の小学校の教師たちを招いて、子どもたちに読書を楽しんでもらうための指導法を伝授する活動を続けている
大人のお客さん(孫やおい、めいの誕生日プレゼントを買いに来る人たち)には、その子の年齢や好きなものを聞いてじっくりと本を選んであげる。
『もりでいちばんつよいのは?』『グラファロのおじょうちゃん』などで日本でも知られている絵本作家アクセル・シェフラーさんはこちらの書店のご近所にお住まいで、この書店についてこ「この店は本のセレクトも雰囲気もいい。優れた独立系書店を応援するのはとても大切です」とおっしゃっている。
そして、この記事が書かれた当時、近年出版されたおすすめの本として『The Cat and the King』(原題)が写真入りで紹介されています。
アリゲーターズマウス賞が設立されたのは、この記事が描かれた翌年で、初代の受賞作品に選ばれたのが「ねこと王さま」だったようです。
記事中の写真や、Twitterを見ていると、素敵なお店の雰囲気が伝わってきます。
今すぐにでもロンドンに飛んでいきたい衝動に駆られました。
イラストのこと~原書と翻訳版、絵が少し違いますよ
こちらの写真は、英語で書かれた原書の表紙です。(Amazonより)
翻訳された日本語版と違うところがあるのがわかりますか?
バックの色やタイトルが日本語になっているところ以外でよーく見てください。
日本語版はこちら
こちらは、中の挿絵です。
もうお分かりですね。
原書と日本語版では左右が逆になっているのです。
なぜ逆になっているかというと、原書は英語で横書きですから左から右に読みます。だから、ページは右から左へめくる「左開き」の左綴じです。
一方、日本語は縦書きで右から左へ読んでいくのでページをめくるのは左から右、本の作りでいうと右綴じの「右開き」になります。
原書の挿絵は左から右へ読むことを前提に書かれているので、そのまま日本語版で使うと違和感が出てくるのです。
それについても、先ほどの版元さんから伺っています。
ご指摘の通り、「ねこと王さま」は、弊社で出版する際、縦書きにしましたので、
原書のイラストも左右を反転しております。
これは、事前に、著者に日本の事情を説明し、許諾をいただいております。
縦書きにする関係上、こういったことはよくございます。
どの出版社でもそうですが、こういった場合は著者の許諾が必要ですので、
許諾をいただいてから制作にかかります。
逆版にしたことで、お話の進行と絵がマッチしましたし、バスや車の運転席の位置、歩行者は右側通行で車は左側通行など、ちょうど日本人の生活に合っています。
洋書の翻訳本では、こうしたことがよくあるそうですよ。
著者のこと~ねことおうさまの描き方を動画でレクチャー
表紙からも楽しそうな雰囲気が伝わってくる本書ですが、こちらのお写真をみて思わず私も笑顔になりました。
笑顔が素敵だね!
著者のニック・シャラット氏は雑誌のイラストからパッケージデザインまで幅広い分野で活躍されているイラストレーターです。
現在は子どもの本に精力的に取り組んでおられ、とても人気のある作家さんのようです。
下の動画ではご本人がねこと王さまの描き方をおしえてくれますよ。
ご本人のHPからはコロナ感染予防のポスターもダウンロードできるようになっていました。
HPはこちら→http://nicksharratt.com/
Twitterにはかわいいファンから寄せられたイラスト入りのファンレターの写真が載っています。
Twitterはこちら
These are fantastic! To enjoy Julia's event and draw along with me, go to https://t.co/3SXq1LSBLh. #ConjurorCow @MacmillanKidsUK #JuliaDonaldson https://t.co/0FCV1HQhdc
— Nick Sharratt (@NickSharratt1) 2020年8月20日
ニック・シャラット氏の人気ぶりがよくわかります。
まとめ
『ねこと王さま』についてのまとめです。
・ストーリーが面白い!
・イラストも楽しい!
・著者のニック・シャラット氏の笑顔が素敵!
・本が好きな子どものために設けられたアリゲーターズ・マウス賞を受賞している
・おすすめの本にこの本を選んだ英国の書店が素敵!!ぜひ行きたい!!
読書感想文の参考にはなりませんが……
いろんな収穫が得られた面白い作品でした。