映画『浅田家』を見ました。
鑑賞後の感想は、一言でいうと、心温まるいい映画でした。
128分という長丁場でしたが、そのなかで特別に心に残ったワンシーンを紹介します。
【映画】『浅田家!』清々(すがすが)しい母ちゃんの一発!
『浅田家!』は、写真家、浅田政志さんをモデルに事実に基づいて作られた映画です。
登場する俳優陣は日ごろ、私たちがその人に描くイメージそのままのキャスティング。
浅田家の父には優しくてちょっと気の弱そうな平田満さん、たまに怒ると怖いけどいつもはおおらかな母親に風吹ジュンさん、兄貴ぶって威張りながらも弟のわがままを受け入れ、無理難題もきいてくれる心強い味方、長男役に妻夫木聡さん。不揃いなあご髯と肩まで伸びた髪、パチスロで稼ぎ海で釣り糸を垂れる、飄々としてつかみどころのない感じが妙に似合っていた次男役の二宮和也さん。
4人が4人ともとても自然体で演じられており、大災害や深刻なハプニングが起こっても、落ち着いたゆったりとした気持ちで見ていられる作品でした。
あらすじ
心に残ったワンシーンに行くまでの大まかな流れを書きます。
浅田家の次男、浅田政志。彼が写真を取り始めた12歳から、本格的に写真家として独り立ちし、自分の撮りたい写真の道を歩みはじめる姿が描かれています。
三重から大阪の写真専門学校へ進んだ政志は、専門学校卒業後、数年間自分の撮りたいものがわからず、撮りためた写真をもって自信満々で上京、出版社めぐりをするも、まったく相手にしてもらえません。幼なじみの彼女の手助けで、やっと写真集の出版にこぎつけますが、ここまで売れないと思わなかった、と言われる始末。それでも、彼の写真が大好きで、住むところと食べ物を提供してくれる彼女、売れない写真集に文句ひとつ言わず応援してくれる出版社のボス、こっそり彼女に電話して息子を気遣う母。
応援してくれる人たちの願いが叶い、写真界の芥川賞ともよばれる木村伊兵衛写真賞を受賞します。
その後、政志はお客さんの要望に応じて全国どこでも出張し、家族写真を撮り始めます。ところが、お客さん第1号だった家族が東日本大震災で被災。駆けつけた政志は、汚れた写真を洗って持ち主に返すボランティアをはじめます。
ボランティアを通していろんな出会いがあり、その中で迷い、それを乗り越えていく政志。
ラストは人数が増えた浅田家の面々が繰り広げる笑いのなかで幕が下ります。
心に残ったワンシーン、母ちゃんの一発!
政志が写真洗いのボランティアを続けながら、父親の誕生日で一時帰省する場面がありました。そのとき、誕生日のケーキのロウソクを吹き消した父が突然倒れます。脳梗塞でした。そして生死をさまようことになります。そんな状況の中、政志は突如、東北に戻ると言い出すのです。
よりによって、父親が生死をさまよっている大変なときに出ていこうとする息子に、いつも朗らか母は
バチーン!
と平手打ちを食らわせます。
そして、言います。
(たたいた)手、痛いわ。
これが、命が危い父親を置いて出ていく息子を送る母の痛みや、
よう覚えとき!
と。さらに続けて
あんたにとって、どうしても行かなあかん大切なことなんやろう。
ええから、行きなさい。
(セリフはニュアンスです)
いつも冷静な母親も、さすがにこのときばかりは感情に走ってしまったのか、と思ったら、そうではなくて、息子の歩む先を見据え、それをわかった上での痛い一発でした。
浅田家のお母さん、すごいなぁ、
って、思いました。
弟子入りしたいくらいでした。もう遅いけど。
最後に
政志の夢を支え続けた、というか夢に巻き込まれた家族や恋人の関わり方がとてもよかった、あったかくて、すがすがしくて、いい映画だったなぁ、と思います。
そしてもう一つ感じたこと。
幼い命が尽きる前に写真に残しておきたいとレンズの向こうで笑顔で被写体となった家族の写真、
幼い少女が探し続ける父親の写真、
生還を願っていた父が目にしたありし日の娘の写真
1枚の写真がもつストーリーはそれぞれで、どれもがその人にとっての大切な大切な宝物でした。
写真ってこんなにいいものだったんだなぁ、と写真の良さを改めて感じ、自分の1枚はどんな写真だったろうか、と思いを馳せました。
会場を出たとき、心の中にポッと灯がともったような温かさが残る作品でした。
たまたま見終わった時刻が夕方で、目の前の大きなガラス窓越しにオレンジ色の空が見えたのが、なんだか映画のラストシーンみたいで、得した気分になれました。
★こちらの写真集は映画でもかなり忠実に再現されています
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【映画】浅田家!
原案:浅田政志『浅田家』『アルバムのチカラ』(赤々舎刊)
監督・脚本:中野量太
脚本:菅野友恵
(キャスト)
浅田政志:二宮和也(少年時代:岩田龍門)
川上若菜:黒木華
小野陽介:菅田将暉
浅田順子:風吹ジュン
浅田章:平田満
外川美智子:渡辺真起子
渋川謙三:北村有起哉
浅田和子:野波麻帆
駿河太郎
姫野希美:池谷のぶえ
松澤匠
篠原ゆき子
内海莉子:後藤由依良
浅田幸宏:妻夫木聡(少年時代:中川翼)