夕方、スーパーで買い物をしていると、
ギャァァァァァァ~
という声が聞こえてくることがあります。
小さい子どもの力強い叫び声。
そして
さっき、これかごに入れたでしょ、だからこっちはかわないよ。
と諭すような声。
すると、すかさず
ヤダ、ヤダ、ヤ~ダ~、これがいいの
なら、こっちは返すよ
あ、あ、だめ! やだ! こっちもいるの~
こんなふうなやり取り。
夕方は、小さな子どもがちょっと疲れてくるころ、そしてお腹もすいてくるころ、だからわがまま虫が動き出す時間帯でもあります。
そんな調子でダダをこね言いたい放題の子どもに対して
ダダこねても、その手にはのらないよー
と、冷静に話しかけているママはエライ。
わたしはいつも頑張って!と心の中でエールを送っています。
子どもにイライラがたまっていたとき、救われたことば
息子が3歳くらいの頃、近所のスーパーでやはり同じようなことがありました。
おもちゃ付きのお菓子を買ってくれとせがまれて、ダメだといってもどうしても譲らない。
こちらとしては、先日似たようなのを買ったばっかりだ、また今日もほしいなんて、そんなわがままにはつき合えない、絶対に甘やかしてなるものか。
こうしてバトルが始まりました。
「かって!」
「この前、買ったのがあるよね」
「これがほしいの!」
「同じようなの持ってるでしょ」
「もってない、これがいいの!」
「今日は買えないから、がまんして、ほら、帰るのが遅くなるからもう行くよ」
「イヤだ!イヤだ!」
「………」
「やーだー、や~だ~」
最初は冷静を装っていた私も、何を言っても聞かない息子にイライラ。
そのうち息子は声を張り上げて泣き出す始末。
とうとう私は周囲の人のことなどすっかり忘れて大声で
「もう、いい加減にしなさい!」
と言いそうになったとき、
救いの女神が現れました。
彼女はフラ~っとどこからともなく出てきて(そんなふうに見えました)
息子に近づくと
泣いてる子はどこや~?
泣いてる子はワシの家にもろていくぞ~
と、その辺にいる人みんなに聞こえるようにいいました。
息子のそばで、わざときょろきょろしながら、
泣いてる子はどこぞにおらんか~?
それを聞いた息子は…
ピタッと口を閉じ、固まって動かなくなっていました。
さらに彼女は、息子の顔をじーっと見つめて
泣いてるのはこの子か?
と、声をかけました。すると、息子は
びくっとして、ぶるぶると首をふるばかり。
そのうち、息子から目をそらすと、チラっと私に微笑んで、そのまま周囲の人にまぎれて見えなくなってしまいました。
私は彼女と目があったとき、
ありがとうございました
そう言うのが精一杯。
全身の力が抜けたような気がしました。
おかげで息子は私の手をギュッと握ってはなさなくなり、無事に帰宅することができました。
あの方が来てくださらなかったら、私は息子を怒鳴りつけ、息子は大泣き、そして私は自己嫌悪、という後味の悪い結末になっていたところでした。
なんて優しい方だろう、感謝の気持ちでいっぱいになりました。ありがたかった。
あの時の女神さま、この場を借りてひとことお礼申し上げます。
ほんとうに、ありがとうございました。
知らない人の声が熱をさましてくれた
見ず知らずの人に、突然声をかけられると、子どもは一瞬ひるみます。
え?なんだ?この人?
って。
そして、母親も、見ず知らずの人が自分の子どもに話しかけてきたら、
あ、いけない!
と、我に返り、子どもの言葉にムキになっていた自分に気がつきます。
よそ者のひとこと、ひと声には煮詰まった親子の熱を冷ます力があるんだなあ、と私はこのとき彼女から学びました。
煮詰まりそうな親子を見かけたら、子どもに声をかけるようにしています。
どうした?どうした?
ねえ、ねえ、ママがとっても困ってるよ。
ママの言うこと聞くのがイヤなの?
それなら、おばちゃんちの子どもになっちゃう?
と。
いまのところは、まだ、
おばちゃんといっしょにかえりたい!
と言ってくれた子は一人もいません。
そういえば、安田美沙子さんが新幹線内で息子さんを怒鳴ってしまって自己嫌悪に陥り、どうしていいかわからなくなった云々、とインスタグラムに投稿していたとの記事がありました。
これには同じような経験をしたことがある先輩ママさんから、あたたかい言葉がよせられていたようです。
怒鳴っちゃいけない、と思ったのに、怒鳴ってしまった。
これは、きっと多くのお母さんたちが共感する言葉だったと思います。
その気持ち、わかる、私もそうだったよ。と。
この私もそうでしたから。
怒鳴ってしまいそうになるお母さんを見かけたら、これからも声をかけて行こうと思います。
もし、ダダこねてる我が子に知らないおばさんが声をかけてきたら、
タイヘンだ、知らないおばさんに連れて行かれちゃうよ、
そう言って、小さな手を引いて連れて帰ってあげてくださいね。